
2026年レギュレーション変更を控え、F1チームは「安価かつ迅速」なアップグレード戦略へ
2026年レギュレーション変更を前に、F1チームは「安価かつ迅速」なアップグレード戦略に移行
F1チームが2026年の大規模なレギュレーション変更に開発リソースを集中させる中、今シーズンは「安価かつ迅速」なアップグレード戦略という新たなトレンドが生まれています。大幅な改良への巨額投資ではなく、接戦が続くフィールドで決定的なラップタイム向上をもたらす、リソースをあまり必要としない小規模な改善に焦点を当てています。
なぜ重要か:
2026年のレギュレーションはF1史上最大級の変更をもたらすため、早期からのリソース配分が不可欠です。これは、2025年シーズン中の大規模なアップデートが限定的になることを意味します。しかし、チーム間のタイム差が極めて僅少である現状では、わずかなパフォーマンス向上でも相対的に大きなアドバンテージをもたらすため、実用的な開発アプローチが採用されています。
全体像:2025年の開発シフト
多くのチームは、2025年シーズン中の積極的な開発を事実上縮小しています。今年見られるような大幅なアップデート(例:改訂されたリアサスペンションや、モンツァ用ローダウンフォースウィング)は、2026年への本格的な移行が決まるずっと前にコミットされたものです。ザウバーのスポーティングディレクター、イナキ・ルエダ氏は、2025年の伝統的な計画的アップデートの道筋は「停滞」しており、代わりに、小規模な改善のための「なぜこれを試さないのか?」といった機会主義的なアプローチに置き換わっていると説明しました。
ブレーキダクト開発に注力
この機会主義的なアプローチは、主にブレーキダクトの開発に現れています。ザウバーやアルピーヌのようなチームは、リソースを大量に必要とせずにパフォーマンス向上をもたらす可能性のあるこの分野に、微妙な改良を加えているのが観察されています。
- 低コスト、高効率: ブレーキダクトの微調整は、コスト効率が高く、迅速に開発できます。ルエダ氏が指摘するように、これらは高価な風洞実験を必要としないCFDシミュレーション、あるいは既存のブレーキドラムへの付加物の追加といった形で行われることが多く、コストキャップの制限にも適合します。
- アルピーヌの視点: アルピーヌのテクニカルディレクター、ダビッド・サンチェス氏は、この分野はフロアのような高コスト部品と比較して「開発・評価が非常に安価かつ迅速」だと強調しました。彼は、設計スタッフのほとんどが2026年に集中しているものの、一部はCFDを通じて現在の車への迅速かつ容易な改善アイデアを引き続き探求していると述べました。
ブレーキダクトの重要性:多角的なメリット
ブレーキダクトの設計は、単なる冷却以上の多岐にわたるパフォーマンス上の利点をもたらします。サンチェス氏は、直接的なダウンフォース、気流の操作、ホイールウェイクへの影響がフロアのパフォーマンスに大きく影響する可能性を指摘しました。ルエダ氏はさらに、ブレーキの熱がリムに放射されるのを防ぎ、タイヤの熱管理に役立つとも付け加えています。
今後の展望:2025年と2026年のバランス
シーズンが終盤に差し掛かっても、チームが2025年のアップデートアイデアを完全に閉ざしているわけではありません。「投資対効果(big bang for their buck)」という哲学は厳格に守られます。つまり、最小限のリソース投資で最大の成果を追求するのです。現在のパフォーマンスを最大限に引き出すことと、2026年の記念碑的な挑戦への準備という、この現実的なバランス調整が、シーズン終盤の開発努力をグリッド全体で形作っていくでしょう。
元の記事 :https://www.the-race.com/formula-1/f1s-new-cheap-and-quick-car-upgrade-trend/